■海外のベリー類は?

(6)チリのブルーベリー生産事情(その1)

ブルーベリー栽培研究グループ

主宰 玉田 孝人

はじめに

チリは、現在、アメリカに次いで世界第2位のブルーベリー生産国です。その上、同国は日本にとっては第1位の生果輸入相手国(2011年、約860t)ですから、我が国のブルーベリー産業はチリ産果実に大きく依存しています。そのため、チリを抜きにして世界のブルーベリー産業を語ることはできません。

 そこで、これから2回にわたって、チリのブルーベリー生産事情―特に、どの地域で、どのような気候条件のもとで、どんな品種が栽培されているか―について紹介したいと思います。

1.チリはブルーベリー生産の新興国

 ブルーベリーが、チリに初めて導入されたのは、1979年、アメリカからでした。当初の試験栽培に成功したことから、1980年代の中期から大手資本が大規模経営に乗り出し、本格的な経済栽培が始まったと言われています。当時、国を挙げて進められていた新たな輸出産業を育成する視点から、ブルーベリー栽培が取り上げられました。

 チリは南半球に位置するため、広く北半球諸国(アメリカ、ヨーロッパ諸国、日本など)の端境期に収穫、輸出できるという絶対的な強みがあってのことでしたが、そのぜんていには、先述した(20128月)5つのブルーベリー産業発展の推進力(要因)がありました。すなわち、チリのブルーベリー生産は、5つの推進要因が有機的に組み合わさって、今日まで発展してきた(いる)と言えます。その要因を再度、挙げます;

(ⅰ)樹および果実形質の優れた品種の誕生。

(ⅱ)世界各地における栽培研究の進展と栽培技術の向上。

(ⅲ)果実の利用用途が広いこと。

(ⅳ)健康機能性の高い評価。

(ⅴ)グローバル企業の参入(特に流通分野)。

2.国土と気候条件

図1
図1

 チリは、南アメリカ大陸南西岸に位置して太平洋に面し、アンデス山脈に沿って南北に延びた細長い国です(図1)。その長さは、北はペルーとの国境から南はホーン岬(南緯55°59’)まで4,000㎞以上に及びますが、東西の幅は狭く、広い所でも355㎞、平均して175㎞(東海道新幹線で東京~静岡駅間より短い)。国土の総面積は756,945k㎡(日本の約2倍)、総人口は、約1,644万人(2006年推計、日本の約8分の1)です。

 気候は国土が南北に長いため多様で、大きく3つに区分されています。1つは、☯北部地域(ペルーとの国境から南緯30°付近まで)で、雨がほとんどない海岸砂漠気候で、アタカマ砂漠が広がっています。一方、☯南部地域≪南緯37°付近以南、コンセプシオン市より南の地帯≫は寒冷多雨地帯で、年間降水量は2,000~4,000mmにも及びます。両者の中間に位置する☯中央部(南緯30°付近から37°付近まで)は温帯圏に位置し、夏は乾燥し、冬は比較的降雨のある地中海性気候で、チリでも特に快適な気候の地帯であり、最も重要な農業地帯です。この中部地帯に人口の大部分が集中しています。

3.ブルーベリー生産地域の区分、栽培上の特徴

図2
図2

ブルーベリーの生産地域は、前述の気候区分より1つ増えて、☯北部、☯中央‐北部、中央‐南部、☯南部の4つに分けられています(図2)。

 

(1)北部地域

この地域は、首都・サンティアゴ市の北部(南緯29°から31°に及ぶ地帯で、行政区分ではⅢ‐Ⅳの一部地域)に当たる地帯で、チリの代表的な生食用ブドウ、亜熱帯果実の産地として発展しています。代表的な都市は、ラ セレナ市。

◆立地条件

 亜熱帯果実の産地だけに冬季が温暖ですから、低温積算時間(休眠覚醒に必要とされる1~7.2℃の低温の積算時間)は200~600時間です。一方、夏は暑く、乾燥するため、灌水が絶対に必要で、また、日射の強いのが特徴です。

土壌が粘質で排水が悪いため、高畝にして植えつけていた。 (200年12月)
写真.1サザンハイブッシュ「スター」の栽培状況

◆タイプおよび品種

 冬季が温暖な気象条件を活かして、チリで最も早い時期の収穫・輸出を目指しています。

そのため、低温要求量が少なく、成熟期が早いサザンハイブッシュの栽培地帯で、品種は「オニール」、「ミスティ」、「スター」、「ジュエル」が中心です。栽培面積は、2011年約430haになっています(写真1)。

特別の関心事

少し断定的な言い方になりますが、チリの北部地域における産地形成は、新しいタイプのブルーベリー・サザンハイブッシュが育成されたことによると思います。しかし、サザンハイブッシュの栽培に関する研究、および栽培経験が少ない中で導入されましたから、品種選択、休眠覚醒に必要な低温、夏の強い日射、土壌の乾燥と灌水、土壌管理、病害虫の対策など、栽培上の課題が次々と発生したようです。

 幸いにも、いくつかの課題は研究テーマとして地域の大学で取り上げられています。成果は、課題解決と併せて、樹、果実の生理などの新しい知見として蓄積され、さらには世界各地のサザンハイブッシュ栽培候補地で活用できるとして期待されています。

図3
図3

(2)中央‐北部地域

◆立地条件

 この地域は、首都のサンティアゴ市(南緯33°6’で、アンデス山麓の標高が520mの高原地帯に位置)と、行政区分ではⅤ地域のバルパライソ市が含まれる地帯で、チリで最も盛んな果樹栽培地帯です。

 関連して、サンティアゴ市の最暖月・1月の気温は20.6℃、最寒月・6月は8.6℃、年降水量は400mm以下(図3)。地域の低温積算時間は約700~1,000時間のようです。

土壌の種類は様々ですが、共通して土壌pHが高いため、硫黄で調整されています

◆タイプおよび品種

 このような立地条件から、同地域はサザンハイブッシュおよびノーザンハイブッシュの栽培地帯で、栽培面積は、2011年、約2,000haに達しています。主要品種は、それぞれ「オニール」と「デューク」です。

○特別の関心事

 この地域の品種構成と成熟期(販売時期)に大変興味を感じます。中央‐北部地域は、全体として北部地域に続く販売時期を狙っていますが、中央‐北部地域の「デューク」、「オニール」が北部地域の「オニール」、「ミスティ」、「スター」、「ジュエル」と比較して、収穫期間にどの程度の相違があるか、という点です。収穫期間がうまく連続していると思われますが、その場合、風味に違いがあるかどうかにも興味があります。

 関連して、チリの北部地域、中央‐北部地域の主要品種は、日本でも栽培され、生食としておいしいと評価されています。しかし、「オニール」と「デューク」は、日本では、特有の「梅雨」の影響から、裂果、糖度不足が指摘され、おいしい果実生産が難しいとされています。

チリ産ブルーベリー生果。2012年12月下旬、スーパーで買い求める。 310g入りで価格は490円。容器の大きさは、盾が12.4㎝、横が18.6㎝、深さが3.8㎝。
写真2.チリ産ブルーベリー生果

*中間のまとめ

 冬のさなかのこの時期、チリ産のブルーベリー生果が輸入され、各地のスーパーで販売されています。収穫時期の違いから国内産生果と直接的に販売競合はしていませんが、「ブルーベリーの生産、流通はますますグローバル化している」ことを強く実感させられました。そして、どんな品種で、品質はどうか、値段は、などと疑問が深まり、つい買ってしまいました。(写真2,3,4)

 日本のブルーベリー産業がチリ産の果実に依存する状況は、今後も長年にわたって続くと思われます。そのため、チリの生産事情を知ることは、日本のブルーベリー生産の課題と特徴を理解し、生産の未来を展望する上で極めて意味深いことと考えます。

 なお、本記事は、「農耕と園芸・最新のチリのブルーベリー生産事情」(201211月号)に加筆訂正したものです。

全果数:209果、平均重量:1.48g、最大果実・横径:1.9㎝、     最小果実・横径:1.0㎝、屈折糖度計示度:11.8° 全体的に果柄痕とその周囲に赤みが残っている果実が多かった
写真.3 写真2の容器に入っていた全果実(台紙は1㎝の方眼紙)

次回は、☯中央‐南部、☯南部地域の栽培上の特徴について取り上げます。