■海外のベリー類は?

第三回 アメリカのブルーベリー産地事情―その2

ブルーベリー栽培研究グループ

主宰 玉田 孝人

◇はじめに

 前回は、はじめに日本のブルーベリー生産の歴史はアメリカからの導入品種に始まり、今日でもなお、栽培品種のほとんどが同国の育成品種であることを述べ続いて次に、アメリカの拡大するブルーベリー生産地域、栽培面積および生産量について取り上げました。今回は各生産地域の立地条件、特に気象条件について紹介します。

 

◇地域の気象条件とブルーベリーのタイプ

 アメリカ(本土)は、日本列島とほぼ同緯度に位置し、東西(太平洋から大西洋まで)は約4000km、南北(カナダ国境からメキシコ湾岸まで)は約2000kmあります。

 国土が広いため気候は多様で、生産地域の気象条件(気温および降水量)はずいぶんと違います(表1)。

表1
表1

 (1)  西部地域

 西部地域の気候は、北部の州と南部の州とで異なります。北部のオレゴン州、ワシントン州は、主としてノーザンハイブッシュ地帯で、気候は西岸海洋性気候で冬と夏の温度差が少なく、降水量は年間をとおして平均しています。

 一方、西武のカリフォルニア州はサザンハイブッシュ地帯で、夏期に乾燥し、冬期に降水量が多い地球海式気候です。

(2)  中西部

 中西部は、ミシガン州を中心としたノーザンハイブッシュ地帯です。湿潤帯温気候で大陸的ですが、五大湖の影響を受けて冬季の寒さはそう厳しくはなりません。

(3)  北東部

 北東部は、ニュージャージー州が中心のノーザンハイブッシュ地帯です。湿潤温帯温気候で、冬は寒く、夏はかなり暑く、雨の多い地域です。

(4)  南部地域

 南部は、北のノースカロライナ州から南のフロリダ州、西はテキサス州にまで及ぶ広い地域です。主としてサザンハイブッシュおよびラビットアイの地帯で、湿潤温帯気候から亜熱帯性気候まで変化に富んでいます。降水量は、ほかの3地域よりも多いです。

(5)  地域で異なる気象条件

 ノーザンハイブッシュの主要な生産州は、西部のオレゴン州、中西部のミシガン州、東部のニュージャージー州ですが、これらの産地の年・成長期・休眠期の平均気温および降水量は大きく異なっています(表1)。しかし、栽培の中心品種は「ブルークロップ」や「デユーク」などで、3つの州(地域)とも共通しています。もちろん、成熟期(収穫期)をはじめ、樹の成長周期に遅速がありますが、同一品種が多様な気象条件(土壌条件も含む)下でも育つ植物的な反応・環境適応性に興味が湧きます。

 

◇アメリカの各地域の気象条件と東京の場合

 表1から、アメリカ各地と東京との年平均気温、成長期および休眠期の気温を比較すると、ノーザンハイブッシュでは、東京が西武地域の北部州、中西部および北東部地域よりも高いことが分かります。一方サザンハイブッシュおよびラビットアイでは、東京が、南部や西部地域のカリフォルニア州よりも低くなっています。さらに、年間および成長期の降水量は、東京がアメリカの4地域・産地(州の都市よりも多くなっています。特に、成長期の降水量は、東京が圧倒的に多いのが分かります。

 それでは アメリカと日本(東京)における気温よろび降水量の違いから、どんなことが見えてくるのでしょうか。栽培面から次の3点を上げたいと思います。

 

 その1つは、品種の持っている環境適応性です。品種(樹)には成長に好適な範囲のほうかに、限度を超えると成長が阻害される最大(最高)値と最小(最低)値の限界点があります。最大値と最小値の巾が広いほど環境適応性があるといえます。環境適応性に幅があるおかげで、アメリカで育成された品種が、日本も含めて世界各地の異なる気象条件(気温、降水量、光など)および土壌条件の下で栽培できる訳です。

 

 2つ目は、海外で育成された新品種の本格的な栽培の前に、まず品種特性調査が必要なことです。アメリカの品種改良はミシガン、ニュージャージー(アメリカ農務省)、ノースカロライナ、ジョージア、ミシシッピー(アメリカ農務省)およびフロリダの各週の州立大学(試験場)で行われています。これらの州の気象条件、土壌条件は、日本の事情と大きく違っています。前述したように樹(品種)には環境適応性があるといっても栽培してみなければ判らない点が多々あります。そのため、自分の園(地域)で栽培する場合には、品種育成州の気象条件を知り、試作して樹の成長の良否、開花時期、成熟期、果実品質、栽培上の特性などを比較してみることが重要です。試作の結果、成長が悪い、成熟期が早い(遅い)、果実の糖度が不足、酸味が強すぎる、日持ちが悪いなど、自分の望む形質が見られなかった場合には本格的な導入を取りやめる勇気も必要でしょう。

 

 3つ目は、東京では成長期(411月。特にハイブッシュの成熟期・67月が梅雨時期である)に降水量が多いことです。梅雨は「アメリカに無くて日本にあるもの」です。梅雨が良品質の果実生産に及ぼす影響については別の機会に延べますが、全体的に水っぽい果実になっていることはご存知のとおりです。

 

  なお、本記事は「農耕と園芸・最新のアメリカのブルーベリー生産自受(2) (201210月号)」に加筆訂正したものです。