世界のブルーベリー産地から見えるもの

19.中国のブルーベリー生産事情(その4)

世界のブルーベリー産地から見えるもの
(19)中国のブルーベリー生産事情(その4)

ブルーベリー栽培研究グループ
                                主宰 玉田 孝人

◇はじめに
 これまで、3回にわたって中国のブルーベリー生産事情について紹介してきました。1回
目は導入・普及の経緯と栽培面積、2回目は栽培地域、そして3回目は栽培上の特徴につい
てでした。4回目となる今回は、まず前回の続きの栽培上の特徴、次に栽培上および経営上
の課題について、最後に将来展望について紹介します。

4.栽培上の特徴
(2)主要な栽培管理―3回目の続き―
4)マルチと灌水
植え付け後は、樹の周囲のみ、各種の資材でマルチしています。マルチ資材は、森林資源が豊富な東北エリアの長白山山地、長春、黒竜江省地域(ローブッシュ、ハーフハイハイブッシュ、ノーザンハイブッシュの耐寒性品種の栽培)では、ほとんどがオガクズです。森林資源が少ない他のエリア(華南では、サザンハイブッシュとラビットアイを栽培)では、特に若木期、わら、もみ殻、プラスチックフィルムなどのマルチが一般的です。
灌水の必要性は地域によります。長白山山地は降水量が多いため、通常、灌水の必要はないといわれています。他のエリアでは灌水が必要で、成長期間中、トリクル法やオーバーヘッド方式で行われています。
5)施肥
 施肥設計は、樹齢と剪定量にあわせています。
 有機質肥料は、植え付け時に、植え穴の土壌と混合して使用しています。植え付け後は、完全肥料を、1樹に、10~15g施用します。
6)病害虫、鳥害
中国では、ブルーベリー栽培が新しいため、現在のところ防除が難しい病害虫は見られません。しかし、鳥害は多く、案山子や音響装置を使って追い払っています。

 



5.栽培および経営上の課題
 栽培上および経営上の課題として、次のような点が挙げられています。
(1)冬季の低温障害 
東北エリアでは、冬季の低温障害(凍害)が最も大きな課題です。冬季は低温で乾燥し、
さらには積雪量が少ないため、樹体が生理的乾燥状態になり、樹齢に関係なく地上部全体が枯死するからです。この障害は、無加温のハウス栽培によって回避できます。しかし、大規模栽培できないのが難点です。
(2)成熟期に降水量が多い
 東北エリアの遼寧省の丹東(ハーフハイハイブッシュ、ノーザンハイブッシュの耐寒性
品種の栽培地)では、年間降水量(1,000~1,200mm)のほとんどが、収穫期の7月と8月
に集中しています。そのため、果実の着色不良、糖度の不良(多くの場合8%以下)、裂果、
貯蔵性が劣るなどして果実品質が悪くなり、商品性が劣ります。
同様の問題は、ラビットアイとザンハイブッシュの栽培地域である華中、華南エリアの長江流域と中部地域でも見られます。この障害は、やはり無加温のハウス栽培で回避できます。
 関連して、筆者は、中国でも、日本の梅雨期と同様に、収穫期(成熟期)の過剰な降水に
よる果実品質の劣化の問題になっていることに関心があります。その回避策として、無加温
のハウス栽培が勧められていることにも、興味が沸きます。


(3)開花期の晩霜害
 東北エリアでは、開花期間中に晩霜が降ります。晩霜によって、著しく結実や果実の成長が悪くなり、さらには収量も少なくなります。
(4)土壌中の有機物含量
土壌中の有機物含量は、地域によって大きく異なり、また、費用とも関係しています。
東北エリアの長春地域では、土壌有機物含量が1%以下のため、ピートモスを使用して土壌改良しています。このため、開園準備費が高くなり、ピートモス代は費用全体の4分の1にも上ります。
(5)労働力不足と賃金
 国内経済の発展に伴い、ブルーベリー栽培でも、労働力の不足が大きな問題になり始めて
います。例えば、2007年、労働機会を求めて、農村部から都市部へ1億3千万以上の人口
が移動しています。このうち、50%が農業労働者でした。併せて、労働賃金も2005年から
2007年には30%も上昇しました。
労働力不足と、労働賃金の上昇は、国際市場で競争する場合、販売面で極めて不利な条件の1つです。

 



6.将来展望
 中国は、潜在的な大きな市場と位置付けられ、その理由として、3つ上げられています。
1つは、国内経済の急速な成長に伴って、多くの国民(特に都市住民)がブルーベリー果実の健康機能性を認識していることです。
2つ目は、ブルーベリー果実の利用法が多様な点です。現在、スーパーでは、生果のほか冷凍果実、ジュース、ワイン、ジャム、缶詰め、エキス、菓子、アイスクリーム、ヨーグルトなど30種以上の製品が販売され、果実消費が拡大しています。
 3つ目は、バイヤーによる国際市場向けの販売です。この場合、労働費や生産コストが低
いことは、果実販売上、非常に有利です。
 上に挙げた条件から、“中国のブルーベリー栽培はさらに発展するはず”、と将来展望が語
られ、2030年には、栽培面積を100,000haに増大させたいとしています。このような壮大
なプランが、日本海を隔てた隣国・中国で進行しています。その場合、中国は、ブルーベ
リー産業発祥の国・アメリカを抜いて(2008年、アメリカの栽培面積は約30,600ha)、世
界第1位になっているでしょう。

 



◇おわりに
2030年における中国の栽培面積が世界第1位になった場合、その時点における、またそれ以降における世界、中国、日本のブルーベリー産業の状況について、残念ながら筆者には予測できません。しかし、想像力を働かせると、栽培の基本である品種、栽培技術、世界の栽培(生産)地図、国際的な商品として輸出入の流れ、消費者の志向と果実利用の形態、などに大きな変化が現れていると推察されます。
 中国では、2030年の栽培面積を100,000haにしたいという、ブルーベリー栽培(生産)
の発展計画があります。日本ではどうでしょうか、皆さんは個々に計画をお持ちですか。現
在のところ、日本には無いように思います。
 日本のブルーベリー産業のさらなる発展のためには、日本全体でおよび地域ごとに、「ブルーベリー生産の将来展望」の検討が必要であると考えます。将来展望の検討に当たって、これまで紹介してきた「世界のブルーベリー産地から見えるもの」―アメリカ、チリ、日本、ヨーロッパ主要国、そして中国の生産事情―が参考になることを願っております。

 *次回から、オーストラリアとニュージーランドの生産事情について紹介します。


引用文献
 1.He Shanan, Hong Yu, and Yin Gu (2009).Acta Hort.810: 61- 64.
 2.Li, Yadong  et al (2007)Blueberries for growers, gardeners, promoters (Childers , N. F. and P. M. Lerene eds.) . N. F. Childers Publications. Gainesville:243-247.
3.Li, Yadong and Yu Hong (2009) .Acta Hort.810:445-456.
 4.Retamales, J. B. and J. F. Hancock eds.(2012) BLUBERRIES. CABI. Cambridge: 1-17.